第三回ウガンダ貧困緩和自立支援調査研究活動2009年報告書
2009年9月2日 井上昭夫記 今回の他者への献身プロジェクトは二班に分かれて推進された。 第1次隊は、おやさと研究所所長の河口尊助手、渡辺菊眞高知工科大学准教授、江崎貴洋環境デザインスタジオ・セブン+4、と高橋俊也環境造形システム研究所員の4隊員からなり、河口以外は学外よりの自費参加で、渡辺は本学の過去における企画に参加したベテラン建築デザイナーであり、建築史の専門家である。渡辺、江崎は土嚢建築をヨルダンでもNGOから依頼されて、ここ数年その仕事に携わっている。 第2次隊は、筆者と「カブールトライアングル」の製作共同者ハグマシーン代表の井上春生映画監督の2名であった。第1次隊は、8月4日に関空を出発し18日に帰国した。第2次隊は、8月8日に出発してウガンダで第1次隊と合流し、14日にウガンダを立ち、デリーに3泊した。デリーでは、カブールより招聘したAfghan Film の所長アーマド・ラティフ映画監督をまじえて、South Asia Foundationの書記長を勤めるラフール・バルァ氏と映画による平和構築に関する情報交換を行った。ラティフ氏は本学創立80周年記念事業であるシンポジウム参加のために来学し、記念講演を氏の製作した映画紹介とともに地域文化センター主宰の記念プログラムで行ったことがある。一方バルァ氏は1991年に発足したゴア国際映画祭の主宰者で、氏からは現在準備中のインドを中心とした近隣8カ国のBuddha and Peaceのドキュメンタリー映画の日本紹介や、新映画企画についての共同制作を提案された。話し合いにおいては、来年度の平城遷都1300年祭記念事業に結びつける映画製作企画の可能性を検討した。くわえて、同基金が開発する貧困地域を視察し、陶器製造を主とした家族単位作業の映画記録撮影を克明に行った。加えて宿泊所の近くにあったサイババ寺院などを早朝訪問し、参拝者へのインタビューや映画撮影をおこない、19日に帰国した。 第1次隊は、白ナイルの源流があるジンジャ市近くのUganda Namutumba Isegero に位置するブソガ族の寒村において一週間にわたり土嚢建築をおこない、一棟のドームモデルを現地の建築家などとともに完成した。彼らは我々との作業に学んで、渡辺氏が設計したユニットを独自に将来仕上げる予定である。事の発端は、昨年マケレレレ大学の合同会議で紹介されたヴィクトリア湖畔カージにおいて建築を始めた自然建築・土嚢ドームに倣ったシェルターを建てて欲しいというMultiversity Paolo Wangoola 学長の依頼による。ワンゴーラ学長はブソガ族出身で英国に留学した知識人であり、消え行くブソガ族の言語と文化の保存に意欲を燃やしている反グローバリゼーションの先鋒として知られる人材である。出発前の彼との主義思想論議に関するメイル交換はゆうに一巻の書物になるほどである。 一方気がかりであったカージのエコヴィリッジ・ユニットのその後と、アグリトピアの原型は植樹によってほぼ完成に近づいていた。ユニットの中心棟は約8メートルの高さで、3000枚の土嚢を積み上げたドームである。自然建築カテゴリーのホープである土嚢ドーム建築界においては、世界一の高さを誇り、ギネスものだと感動した次第である。 第2次隊は、到着直後Isegero village にむかい第1次隊と合流し、ワンゴーラ学長を主体とするブソガ族の植林やアグロフォレストリーなどを視察。第1次隊が完成したモデル土嚢ドームや土着の伝統的住居などを視察し、ブソガ族をはじめ子供達や家族の生活様相などの映画撮影をおこなった。今回の土嚢建築には400枚の土嚢を日本から持参し、昨年参加したカージ村における土嚢建築経験者であるキクング村出身の孤児一人の協力を通訳と実務をかねて依頼した。 1次隊の河口は2次隊の到着後一次隊と2次隊がインドへ出発するまでに合流した。上記自費参加の他学の3名は、首都カンパラにおいて自主行動を取り東アフリカの伝統的建造物の調査をおこなった。河口は、日本から持参したMJCO2 デジタル CO2 モニターとクリーン・チェッカーを使って、34箇所において空気・大気汚染と水質汚染の調査を行った。 キクング村では、天理丸に乗船し、貧困離島において浄水器を使用した。昨年寄贈したこの浄水器は、マケレレ大学自然科学環境所のJames Okot教授が、ウガンダの各地において調査研究中のものを一時拝借したものである。日本から持参した100枚の大型のビニール袋にヴィクトリア湖水の汚染した水を浄水し、現地の主婦や子供たちに約2時間手動で飲み水を提供し、感謝された。キクングにおいては、新しい布教所(那美岐大教会系キグング集団所)の仮神殿が立派に完成していた。天理丸はそのそばにあるヴィクトリア湖畔に係留してある。孤児たちを支援する集団所が経営するNGO・どじょうの援助資金は、天理丸を貸し出すことによる収入が基金となり、かれらの生活の基盤となっている。天理丸の寄贈が自立支援の目的の一端を果たしていることを知り、感動した次第である。今回も準備段階において本学卒のウガンダミッションセンター石原藤彦所長の協力を得た。筆者は到着直後の現地人との打ち合わせにおいて、脳梗塞後遺症を伴う疲労のため意識を失い、救急車で病院に運ばれたが、翌日からは不思議に予定をどうやらこなして無事帰国した。すべてに感謝している次第である。
by inoueakio
| 2009-09-01 12:53
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